オルタナティブ・ミュージック

オルタナティブ・ミュージック (alternative music) とは、現在の商業的な音楽や流行音楽とは一線を引き、時代の流れに捕われない普遍的なものを追い求める精神や、前衛的でアンダーグラウンドな精神を持つ音楽シーンのことである。しばしばロックの一ジャンルとして思われがちであるが、厳密にはジャンルではない。「alternative」とは英語で、通常「代わりの」「代用の」という意味であるが、「型にはまらない」という意味もある。本来は音楽的な特徴や性格をあらわす言葉としては使わないのが普通だが、この場合は後者の「型にはまらない」あるいは「既存のポップ・ミュージックの概念を打ち壊す」という意味で「alternative」が使われている。

オルタナティブ・ミュージックとは、ポップ・ミュージックの対義語として使用できるが、時代の流れやある種のメディアなどによって過剰に取り沙汰され、メインストリーム、いわゆる、ポップ・ミュージックになってしまうこともある。その場合、オルタナティブ・ミュージックではないと言える。このどちらか一方が上がっているとき、どちらかは下がっていて、それらが常に入れ替わりながら続いていく関係というのは、美術の概念でいう「現代美術」と「前衛美術」の関係に非常に類似している点がある。

1980年前後に、ポスト・パンク・バンドのキリング・ジョークやパブリック・イメージ・リミテッド(P.I.L)等が登場したことが、オルタナの始まりとされる。また、1980年代半ばに活躍したザ・スミスも、大きな影響を残している。ヴォーカルのモリッシーの書く歌詞は、文学性の高さ、ユーモア、攻撃性、情け無さ(「一人で歩いている時にカップルとすれ違うと、惨めな気持ちになる」「学校時代、体育の授業が嫌いだった」と言った、従来のロックでは決して取り上げられなかった種類の感情を歌っている)が、絶妙なバランスで同居しており、現代のオルタナの歌詞の一つの原型と言える。 こうしたイギリスやアメリカのパンクやポスト・パンク、ニューウェーブやギターポップ、ノイズロックなど、アメリカの音楽シーンの主流から外れた音楽を、アメリカ各地の大学で学生が自主運営していた大学ラジオ(カレッジ・ラジオ)が盛んに取り上げた。彼らはビルボードチャートの音楽を産業的で聴衆におもねったものと感じ、代わりに主流でない音楽、深刻な音楽、自分たちの応援する地元のインディーズバンドなどを放送する傾向があった。全米の大学ラジオごとのチャートをあわせた「カレッジチャート」では、ビルボードチャートとは異なるオルタナティブな(代わりの選択肢となりうる・型にはまらない)バンドが上位に名を連ねていた。 やがて1990年代初頭のアメリカで、ライブハウスやカレッジチャートなどを基盤に爆発的に売り上げを伸ばして台頭したグランジというロックを主に「オルタナティブ」と呼ぶようになり、全米チャート上位を独占していた既存のハードロックやヘヴィメタル、ダンス・ミュージックなどとは違うロックに対しての呼称として一般的に定着した。 またオルタナティヴ・ミュージックはノイズミュージックとしての側面も併せ持っているが、それはこの時に特に精力的に活動していたソニック・ユースによるものによる発展が大きい。彼らは長い間インディーで育んだ音楽的経験と実験音楽への好奇心から次々と新しいノイズサウンドを開拓した上に他の若手オルタナバンドの面倒を見るなどして当時のオルタナティヴシーンの土壌を発展させたと言える。ニルヴァーナやダイナソーJr.などのバンドは彼らに見定められたバンドである。またジーザス&メリーチェイン、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどのバンドはシューゲイザーと呼ばれた甘美的なメロディーで新たなノイズ・ミュージックとしてのオルタナティヴを浸透させた。 現在では、様々なジャンルの組み合わさったオーソドックスでないポピュラー音楽全般を(ジャンル名の頭に冠すなどして)そう呼ぶことも多い。そういった音楽スタイルの一つにミクスチャー・ロック(=ごった煮ロック)があり、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、バッド・ブレインズ、フェイス・ノー・モアやプライマスがその起源である。これらはオルタナティブ・メタルとも呼ばれるが、ミクスチャー・ロック全般をオルタナと捉えるのは的確ではない。その後、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの出現で、リンプ・ビズキットやリンキン・パークといったヒップホップ+ロックといった形態へと変化した。なお後者2つのバンドの音楽性はヘヴィメタルの新しい形として受け入れられニュー・メタルと呼ばれている。 また、リリックを重視する一部ヒップ・ホップアーティストがオルタナティブ・ヒップホップと呼ばれることがある。 [編集] 音楽的な特徴 このジャンルの一部には、歌詞を伝えるための音楽ではなく、音楽を作る素材の一部として歌詞を捉える傾向が有る。歌詞に全く意味のない場合もあり、歌詞カードを作らないアーティストもいる。一方、R.E.M.(中期以降)やレディオヘッドのように、作詞能力の高さに定評の有るバンドも多い。彼らの歌詞は、(特に9.11以降は)政治性・メッセージ性が強くなっている。ただ、文学性の高さから、良くも悪くも「分かりやすさ」に欠ける傾向は有る。グランジの代表格ニルヴァーナのカート・コバーンの歌詞は、一見ナンセンスなようだが、彼自身の苦悩の渾身の表現であった。また、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの場合、歌詞は極めて政治的・直截的で、これが彼らの魅力の一つとなっていた。このように、歌詞に対するスタンスについて、オルタナティブ・ミュージック全体に共通する傾向を挙げることは難しいが、単純なラブ・ソング等、一般的なヒット曲に有りがちな題材とは、一線を画していると言える。 歌詞を重視しないタイプのアーティストの場合、ヴォーカルを音として捉えているせいか、簡単に加工する傾向にある。また、音楽性以外にもレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、フェイス・ノー・モアのような、奇抜・変態的なライブパフォーマンスを意図的に行い、話題豊富なバンドが多いのも特徴。 また機材としてはグランジやシューゲイザーと共に隆盛になったオルタナバンドのギタリストが好んで使用したギターはフェンダー社のジャガーやジャズマスター、ムスタングなどが挙げられる。 音楽に取り組む姿勢という点では、ロックに対する思い入れをストレートに表さないバンドも少なくない。ぺイヴメントは、やる気・情熱といったものを一切感じさせない脱力しきった演奏で注目された(本人達は「ライブはリハーサル」と発言していた)。ダイナソーJrは、演奏はともかくインタビュー等では、限りなく投げやりな態度をとることで知られていた。

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